幻死 
イナエ


無影灯の下で
 (あるいは 河原で 砂漠で)
鶯色の神々にかこまれ
 (あるいは 烏色の悪魔に)
無防備に横たわる

切り裂かれる皮膚
晒し出される内臓
 (生きものの命を掴んだ少年の日)

ガリガリ削られる頭蓋骨
の振動が脳幹に響く
ガシガシ叩かれる肋骨の響き
に脳細胞は波打つ
逃亡を企てる命を閉じ込める神々の挑戦

切り裂かれ 叩かれ
身体がのけぞり 丸まり
肺が縮み 胃が絞られる
 
  ああ 死んだ方がましだ

この苦しみは
生きて救われるのか
死ねば痛みはなくなるか

 (肉体に君臨する命を切り裂く悪魔の刃) 

いや 耐えるのだ
生きるために骨を削り
生きるために
切られる 叩かれる

遠ざかる意識に
生きる望みが浮遊している 

遠ざかる望みに
生へのメッセージが揺れている


自由詩 幻死  Copyright イナエ 2015-03-03 15:36:41
notebook Home 戻る