舞踏
nonya
手ではない何かが動いて
君ではない何かを引き寄せた
恋という記号を剥ぎ取って
唇ではない何かが貪った
唇ではない何かが動いて
名前ではない何かを呼ぶと
君という記号を脱ぎ捨てて
鎖骨ではない何かが歪んだ
情のままに皮膚は隆起し
業のままに呼吸は旋回し
欲のままに汗は蛇行して
時間の岸辺を侵食していく
意識と無意識の狭間が
際限なく広がっていく中を
言葉ではない何かが反響して
恋ではない何かが疾走していくのだが
ターンもステップもしないまま
違うクライマックスに辿り着いた
二人がすごすご下山する頃には
君ではない何かは君になろうとして
恋という記号を丁寧に身にまとい
上目づかいで言葉を吐くのだろう