いたい。
かんな


死ぬ。
という言葉は重たいので書きたくない
書いているのは
そろそろ自由にしてあげたいから
それほどに今は
定義することに困惑している

うつ病の母が書をしたためている
私が幼い頃に
睡眠薬を大量飲んで生死の境をさ迷った
という話を
うわの空で聞いていた
誰も傘を貸してはくれなかったのか

雨がひどいな
父が呟くとどしゃ降りになった
孫を抱き風呂に浸かる背中を見ている
生まれてきたわが子を見ている
生とはこういうものか
と思えば、どういうものなんだ死とは
などと頭を過る

炊飯器の湯気はすべてを隠す
夕暮れどきというものに焦がれる
遺書がどこかしらのポストに入り込み
誰かに何かを通達する
やさしいだけのひとなら助けてくれる
別に悪いことじゃないし
良いこととも法律書には書いてない

夜更けにメールで今から死にます。
星が綺麗すぎて目が霞んで
その文字が浮かび上がるには相当な
時間が必要だ
わが子は横の布団で寝息をたてている
私ももう少しで眠りにつく
伝わるべきことが
伝わるひとに繋がったならしあわせだ

私はただ
ここにいたい。ただ生きて




自由詩 いたい。 Copyright かんな 2015-02-26 18:07:46
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