旅人
服部 剛
遠藤周作の「イエスの生涯」を読み終え
僕は本をぱたん、と閉じた
(密かな息が頬にふれ)
本の中で十字架にかけられ
頭
(
こうべ
)
を垂らし、息絶えたひとの想いは
肉体
(
からだ
)
を脱いだ風となり
二千年の時を越え
遠い異国で本を手にする僕の前に…
――世に消えないものは何だろう?
死ぬのが恐くて逃げた弟子等さえ
ゆるして死んでいったひとよ
ひと時目を
瞑
(
つむ
)
った、僕を
遠くから呼ぶように
暗闇に浮かぶ
あの瞳
自由詩
旅人
Copyright
服部 剛
2015-02-22 21:45:42
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