見学者
nonya
正義と正義のせ
めぎ合い 置き
去りにされる血
と涙 見え透い
た手口のイカサ
マ 手札は不条
理のフルハウス
パンドラの箱の
隅を 爪楊枝で
つついているの
は いったい誰
悲しみは波のように
幾度も打ち寄せるけれど
突然の不運に足をすくわれた君に
手を差し伸べることはできない
僕は僅か5.5インチの
世界の窓のこちら側
歯痒さと情けなさを
鼻腔の奥に感じながら
「可哀想」と言いかけた唇のままで
もう次の世界の窓を開いている
ほんの指一本で
自然からの無慈
悲な返答 ただ
狼狽えるばかり
の不自然 夕焼
け色のプロパガ
ンダ ならされ
ていく目と耳と
心 知り過ぎる
ことは未来では
ない 溶けかけ
たイカロスの翼
スクランブル交差点を渡りながら
次から次へと窓を開いては
次から次へと慣れてしまう
プラットホームから落ちそうになりながら
次から次へと窓を開いては
次から次へと忘れてしまう
どうしても倒せないラスボスの背後から
突然の不運に襲われて
悲しみに足をすくわれて
僅か5.5インチの
世界の窓の向こう側に行ってしまうまでは
僕は
少しだけ憂鬱で少しだけ退屈な
見学者