見学者
nonya


正義と正義のせ
めぎ合い 置き
去りにされる血
と涙 見え透い
た手口のイカサ
マ 手札は不条
理のフルハウス
パンドラの箱の
隅を 爪楊枝で
つついているの
は いったい誰


悲しみは波のように
幾度も打ち寄せるけれど
突然の不運に足をすくわれた君に
手を差し伸べることはできない

僕は僅か5.5インチの
世界の窓のこちら側

歯痒さと情けなさを
鼻腔の奥に感じながら
「可哀想」と言いかけた唇のままで
もう次の世界の窓を開いている

ほんの指一本で


自然からの無慈
悲な返答 ただ
狼狽えるばかり
の不自然 夕焼
け色のプロパガ
ンダ ならされ
ていく目と耳と
心 知り過ぎる
ことは未来では
ない 溶けかけ
たイカロスの翼


スクランブル交差点を渡りながら
次から次へと窓を開いては
次から次へと慣れてしまう

プラットホームから落ちそうになりながら
次から次へと窓を開いては
次から次へと忘れてしまう

どうしても倒せないラスボスの背後から
突然の不運に襲われて
悲しみに足をすくわれて

僅か5.5インチの
世界の窓の向こう側に行ってしまうまでは

僕は
少しだけ憂鬱で少しだけ退屈な
見学者




自由詩 見学者 Copyright nonya 2015-02-21 14:11:32
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