ひとかけら
花咲風太郎
もしかしたら
言葉は音になって
空気中を漂い
あなたの耳から侵入する
かもしれない
もしかしたら
言葉は文字になって
どこかに刻まれ
あなたの目から侵入する
かもしれない
僕は知りたい
あなたに侵入した言葉が
いまどこにいるのか
あなたの形のよいくちびるから漏れる
心地よい囁き
そのひとかけら
あなたのうつくしい指先から
この世界に放たれるその一文字
やさしい筆致
そのひとかけら
僕だけが知っている
そのひとかけら
そのひとかけらに
たしかに僕がいること
僕のひとかけら
そのひとかけらに
いつのまにかあなたがいること
そんな
掌にのるようなちっぽけなこと
それが
僕が生きていること