テディベアと詩集とブランケット
夏美かをる
『お母さん、最初から一緒に寝てほしいの』
『あのね、お母さんは忙しいの。
後で行くから、最初は一人で寝ないとね』
今夜も娘は
テディベアを抱きしめて寝ている
その規則正しい寝息を確認して
私もゆっくり目を閉じる
言霊宿る一冊の詩集を
しっかりと抱きながら
そう、人のぬくもりは
暖かくて 気持ちよくて
つい身を委ねたくなるけれど
そんな心もとない存在に
あなたの安らぎを預けてはいけない
その人はあなたのために
永遠には存在してくれないのだから
心がくじけた時にはいつでも
ただそっと寄り添ってくれる
テディベアと詩集
そして自らが発する体温で
自らが温まるように
さりげなく包み込んでくれる
一枚のブランケット
それらがあれば
ぐっすりと眠れるよね
たとえいつか目の前の人が
いなくなってしまっても
しっかりと目覚めて
勢いよく伸びをするために―
一億五千万キロ先の彼方から
毎朝生まれたての光が届けられる限りは