どこにも書いてないことを教えて
木屋 亞万

どこにもない場所を教えて
だれもまだ踏み込んでいない花園に
こっそり招待してほしい
月のなくなる夜でいい
火も電気も眠るころに
しずかにねどこを抜け出して
あなたの闇に逢いに行くから

どこにも書いてないことを教えて
見栄も嘘も日常もネタも思想も芸術も
何でもネットに流れていくから
放流せずに残したままの
とっておきの言葉の花束を
ぼくだけに見せてくれないか
傷つけないように気をつけるから

ぼくだってとっておきをきみに言おう
きみのうなじに口を近づけ
どんな小さな言葉の端も
耳からこぼれないように
この低い声がきみの温度で発酵し
鳥のさえずりになって光る

聞いて
ぼくのおなかには不機嫌なカエルが住んでいる
たまに火を吐くしいつもとても眠そうなんだ

聞かせて
君の胸の真ん中にはレンガの壁に囲まれた花園がある
花が咲き乱れる真ん中に小さな卵があり
そこで透明な鳥が眠っていること

きみの花園に包まれた白いたまごを知ったとき
この胸にも新しいたまごが生まれた
不機嫌なカエルはそのぬくもりに満たされて
しあわせな雪の中で満足そうに冬眠している


自由詩 どこにも書いてないことを教えて Copyright 木屋 亞万 2015-02-14 22:18:23
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