墓所にて
そらの珊瑚

 数え切れない
 手に負えないくらいの
 幾千枚の白いはなびらが
 ほとんどいっせいに
 枝という枝を離れて
 舞い踊る
 まるで蝶のように
 儚げであるのだけれど
 或る意志を持って
 舞い踊る
 実際のところ
 幾枚かは本当に
 虚空へ旅立っていき
 光が乱反射するものだから
 あんまりまぶしくて目をそらした
 わたしには
 ゆくえは追えやしない
 その一枚がたとえ特別なたましいだとしても

 たちくらむ、
 しかなかった

 幼い頃からここは
 廃墟のような終点のまま
 古い墓石は
 昨日の雨を吸った
 灰色の苔をまとい
 柔らかく息をしていて
 祖母と手をつないで歩いた日と
 ――温かな手は永遠にわたしから失われたというのに
 転がっている小石ひとつぶんさえ
 変わっていない気にさせる




自由詩 墓所にて Copyright そらの珊瑚 2015-02-13 11:18:05縦
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