ひとり 歩く
木立 悟





崖の上の
鱗に覆われた洞から
背には火
腹には羽
ひとりの子が空へ這い出る


冬の目
冬の耳
走る光
あらゆる指が
海に着く時


水が夜に螺旋を描き
底へ底へとまぶしくなる
やわらかく細い道のりを
光は静かに駆け下りる


波のはざまの声と色
砂の数だけまたたいている
崖から海へ落ちるものすべて
海になることなく漂っている


洞から吹いてくる風が
砂浜の星を消してゆく
ひとり歩く子の足跡に
星は再び現われる


羽は浪にさらわれた
水平線まで見送った
火は背に未だ燃えさかり
明けない夜を照らしていた


水 声 色 星 風 鱗 羽
砂につづく足跡のなか
いつまでも話しつづけていた



























自由詩 ひとり 歩く Copyright 木立 悟 2015-02-12 09:22:18
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