ぴあす
ただのみきや

窓のない部屋 
白い手首がシャッフルする
水面に触る木洩れ日の
うやむやな笑み と
瞳に乗せたアリジゴクの
匂い 夏の
あまいめまい
名を呼ばれて振り返る
捏造された記憶
朝顔によく似たひと


揺れるブランコ
誰かの影が残した囁き
稲光が時を遮断した
いつまでも追いつけない音
世界の化粧は剥がれ
大地は耳となり食んだ
蝉も鳥も雨も
収束する 
小さな白い殻の中へ
裸のまま遺失物となって


開閉を繰り返し誘う扉
風が突き当り渦を巻く子供部屋
具象を失くした玩具たち
十字架と見紛う銀色の小さなハサミ
蛙の腹の展開図
デッサンの狂った母子像
耳の奥でループする
嬌声 硝子の割れる音
記憶に穿たれたピアス
窓のない男




              《ぴあす:20152月11日》





自由詩 ぴあす Copyright ただのみきや 2015-02-11 16:39:42
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