ひなた
nonya
目を閉じると
緋色珊瑚色菜の花色
まぶたの裏に
現れては消える明るい斑
風の無い中庭は
緩やかな分子で満たされて
枯れ枝から枯れ枝へ
見知らぬ鳥が声を探している
鎖骨のあたりを
温かい何かが伝い落ちていく
産毛が逆立とうとする気配
鼻がこそばゆい
見飽きた日常に
想い出が寄せては返す
湯気の向こうの大きくて丸い背中
膝にそっと置かれた掌の温もり
街のあらゆる背後を迂回した
音がぼんやりと届いて
コンクリートの上で柔らかく弾んだ
光がほのかに匂う
溶けかけた金平糖の夢を見ながら
猫はほんわりと膨らみ
冬のひなたの蛇行した時間の中で
私はただただ惚ける