ささやかな冒険心
イナエ

ここから先は立ち入り禁止
ガードもなくエリアラインがなくても
分かっているさ そんなことは

向こうのエリアの熟れたリンゴが
極彩色の芳香を漂わせてくる
閉ざされた花園には
咲き乱れる虹の幻想が立ち上る

エリアを越える欲求が芽吹き 
成長して目が手が 口が
飛翔の前の収縮にぶるぶる震える

  それはよくないことだ

テリトリーの掟が声を絞り出す
欲求の目を閉じ深い吐息で吐き出し
体表はガードを固めて直立し
白い心臓が緊張する
 
だが 未練は腰に巻き付き
好奇心に侵された脳は造反する

  虎穴に入らずして虎児は得られず
  冒険こそ人生の勲章だ

脳細胞に生じた天秤 
あるいは 柔軟性
誘惑に揺れるシナプス

  ま 少しくらい覗いても
  逢魔の淵は回避出来るさ

細胞膜の隙間に忍び込んだリンゴの
芳香が歓喜を心臓に送る
虹の酒精に溺れて胃は痺れ
微熱に侵される快感に意志が
けだるくうたた寝る

リピートする欲求に飢渇は増幅し
四肢から抑制が外れて
負の上昇が始まる



自由詩 ささやかな冒険心 Copyright イナエ 2015-02-10 19:07:13
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