ささやかな冒険心
イナエ
ここから先は立ち入り禁止
ガードもなくエリアラインがなくても
分かっているさ そんなことは
向こうのエリアの熟れたリンゴが
極彩色の芳香を漂わせてくる
閉ざされた花園には
咲き乱れる虹の幻想が立ち上る
エリアを越える欲求が芽吹き
成長して目が手が 口が
飛翔の前の収縮にぶるぶる震える
それはよくないことだ
テリトリーの掟が声を絞り出す
欲求の目を閉じ深い吐息で吐き出し
体表はガードを固めて直立し
白い心臓が緊張する
だが 未練は腰に巻き付き
好奇心に侵された脳は造反する
虎穴に入らずして虎児は得られず
冒険こそ人生の勲章だ
脳細胞に生じた天秤
あるいは 柔軟性
誘惑に揺れるシナプス
ま 少しくらい覗いても
逢魔の淵は回避出来るさ
細胞膜の隙間に忍び込んだリンゴの
芳香が歓喜を心臓に送る
虹の酒精に溺れて胃は痺れ
微熱に侵される快感に意志が
けだるくうたた寝る
リピートする欲求に飢渇は増幅し
四肢から抑制が外れて
負の上昇が始まる