春日一刻
イナエ

カモの群がる池の畔
桜花映える日差しに包まれ
川鵜と小白鷺が向き合っている

川鵜
  すっかり春だねえ
  これから北へ帰るのか

小白鷺
  いや まだ田に水が入っていないので
  もう暫くここに居る
  餌を十分撮らないと長旅が出来ないから

川鵜は考える
後暫くすれば小魚が出てくるとしても亀も出てくる
あいつら川面をちょろちょろしてうるさいなぁ

小白鷺
  むかし森の木を枯らしたのは
  あんたらだろ

川鵜
  あの頃はな 
  森で子育てする仲間もたくさんいて賑やかだった
  今この辺りではオラと
  三キロほど離れたところにいる三羽の仲間だけだ

小白鷺
  おっ 
  ジーゼルエンジンが唸りだした
  ちょっと見てくるわ

川鵜
  田んぼの水はポンプで汲み上げた水だから
  魚もザリガニも居ないだろう

小白鷺
  それでも 冬眠していた虫が
  掘り出されるからな
  カラスの来ないうちに…

川鵜
  まったく あいつらと来たら
  何でも食っちまうからなあ
  どーれ わしも一潜りしてくるか
  


自由詩 春日一刻 Copyright イナエ 2015-02-08 18:31:21
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