空席
千波 一也
誰でも座ってかまわない席だから
誰でも座ってかまわない席ばかりだから
わたしは却って窮屈になる
わたしの決断はすべて
わたしの責任のもと、許される
ご自由にお座りください、という言葉の軽さは
そこそこに重荷だ
誰でも座れる席だから
誰でも座れる席ばかりだから
もしかしたら
誰もいないのと同じことかも知れない
物事を
ひとつに決めるのは
行く先を
ひとつに定めるのは
危ういこともままあるけれど
安堵に満ちることも往々にしてある
誰をも受容するか
はたまた誰をも無言のうちに拒むか
座席はただ、ある
無数を装って
確実に
個々に