年をとるといろいろ
……とある蛙

川嶋医院の
門柱までの石の階段を
ケンケンしながら昇って行く
昇った先に待っている懐かしい顔
随分と草臥れたセーターを着ている子や
今日おろしたてのジャンパーが
砂や泥で白くなってしまった子
中には青っぱなを垂らしている子もいる
みな一様に大声で話しながら
階段を上ったり下りたりしている

九歳の自分は
随分無理が利く

最後の一段を下りると
そこは拓銀の社員寮の団地だ。
同級生の女の子がいて
北海道に住んでいたから色が白いのだろうなどと
勝手な思い込みもあって
少しだけ逢いたいなどと思っているうちに
どんな顔だったか忘れていることに気づく

年を取るといろいろ失われてゆく
大切な人、大事にした想い出や記憶
嫌なことも。


でも寂しがることはないかも知れない。
だんだん身軽になって行くと考えれば
そんなに辛いことではない。
死ぬまでにどのくらい身軽になれるのだろうか。
子供の頃の想い出だけに生きて行くようになるのだろうか。
これで意識のリセット
そして、お終い。


自由詩 年をとるといろいろ Copyright ……とある蛙 2015-02-05 15:55:17
notebook Home 戻る