葉leaf




お前は世界中の視線の届かない場所へと
巧妙に自分の命を隠した
俺とお前はたくさんのものを交換した
情報や言葉や表情だけでなく肉体や精神にいたるまで
だが交換が命にまで及ぼうとしたとき
俺の血がお前の命に一滴垂れたとき
急にお前は寒気がしたのだった
世界も宇宙も超えた絶対的な寒気だった
お前はお前自身の命が何物だか知らない
俺は俺自身の命など世俗の襤褸に過ぎないと知っている
俺の命とお前の命では価値が違いすぎて交換できない
お前の命は産まれたての子どものように敏感で尊い
お前の命は因果の隙間を縫って無垢なまま保存されていた
俺の命は壁にぶつかり棘に刺さりもはや原形をとどめていない
だが本当は俺の命の方がお前の命より圧倒的に尊いのだ
使い古され歴史が込められ他人の血で塗られた俺の命には
無数の意味と複雑な構造とすべてを象徴する力がある
歴史の中を生き抜いてきた俺の命と
歴史をすり抜けて純粋さを保ったお前の命
ふたつの命が交わるのは余りにも危険で
どちらかが一つの世界を丸々失う
だがなあ、世界など失っていいと思うのだ
ふたつの命がともに触れ合い壊れたとき
そこに生まれる未知の世界
再び生まれた命を共有しながら
俺とお前と新しく生き直そうではないか


自由詩Copyright 葉leaf 2015-02-01 01:03:48
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