未愛
葉leaf



       ――K.A.へ


僕たちが出会ったのは、僕たちが調和して更に大きな調和に至るための、必然的な雨降りのようなものだった。眼差しと言葉と語り合いと、全て君は瞬間的で、全て君は消え去ってゆき、でも僕の中に傷のように消えない構造を蠢かせていく。君は笑いかけ、不機嫌で、無表情で、消極的で、積極的で、海のさざめきのように閃いている。

君の方から声をかけられ笑いかけられたとき、世界の配置がまったく逆になってしまったかのように、僕は勝利したが、同時に君に絡め取られた。だが君はためらっているし、僕は迷っている。それぞれの螺旋をめぐって、いつか螺旋が一つの直線になるように、軌道をうまく導くのが僕の使命だ。磁場は既に設定され、僕たちは溢れかえる磁力でこの磁場を組み替えていく。

僕たちは互いの姿を与え合って、互いの意識に互いの存在を焼き付けてしまった。僕たちは互いの姿を奪い合って、互いの欲望に互いの存在を食らわせてしまった。意識にちらつく優しい晴れ間に呼び起される君の姿に呼びかけると、君は黙っていて、くるっと表情を変える。君は挨拶をしないし返事もしない。ただまなざしに静かに電気を走らせる。

君がいた過去と君がいる現在と君がいるであろう未来、すべてが君の香気で包まれている。柔らかく瑞々しく華やかで繊細な君の香気に僕は反射的に微笑む。お互いに微笑みで触れ合うこと、そこから一歩も前に進まず後ろにも退かないこと。この距離を厳密に守り通すことは可能だろうか。この安全な距離はとても壊れやすく、壊れてしまっためくるめく危機において、僕は君に再び産まれたての「はじめまして!」を叫ぶだろう、全ての明日にめがけて。


自由詩 未愛 Copyright 葉leaf 2015-01-28 04:57:21
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