夜明けに蝶のとどく/即興ゴルコンダ(仮)投稿.8
こうだたけみ
真夜中
に何度も目が覚めた浅い眠
りと眠りの合間に呼び鈴が
かすかに聞こえたんだこん
な時間に宅配便ですのお届
けものは封を切ったら一斉
に飛び立った羽ばたいた部
屋中に音もなく降る鱗粉が
忘れたい夜明けを連れてき
たお早うございます
さらば
一粒食べかけてその気味合
いをお目にかけようと得意
気に口元へ持っていく手を
掴みこの人ですと叫んだ腕
を捻って後ろ手に回して身
動きのとれない満員の通勤
電車じゃ羽ばたけないし飛
べないし左様ならば
時計を
見たら午後二時だった冬の
日差しは傾いていた部屋の
片隅の本棚が膨張していた
よく見たら蝶がびっしりと
背表紙で羽をやすめていた
カーテンを開けると暖かい
東京の最高気温は十八度と
予測され花粉入るし窓なん
か開けないよ今日は
具合が
悪いので休みますすみませ
んと頭を下げて電話を切る
再び夜が来る雷が鳴る一瞬
待って雨が降る本当は最初
から休みだったのに仕事な
んかしていなかったのにそ
もそも誰に謝っていたのか
あなたにはわかるの
夜明け
にとどくことができるのは
蝶だけだと知った夜に窓を
開け放つかどうか迷うのも
悪くないって思う部屋の床
がざらりとするのを確かめ
た手を伸ばすお休みなさい