夜明けに蝶のとどく
かんな




書き写したいことが
夜の中核を担っているときは
和紙に目をつぶり
水でうっすらとなぞってみる
見開いた視野の右隅に波紋
その理由を生きることに託した
一途に一途にと朝は求めるけれど
出来る限りの曖昧さでと注文を促す
一枚めくれば蝶
落ちていく羽の枚数は
琥珀を砕いた先の鱗粉の精度のごとく
命短しと簡単に言ってくれるな
泣けど泣けど届かない声がある
伝えないでくれ
墨には二つの顔があるように
光の届く世には歴史となり
届かない世にはその闇となる




自由詩 夜明けに蝶のとどく Copyright かんな 2015-01-27 14:18:51
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