うた わかれ うた
木立 悟






黒い羽が
夕刻をはたいた
振り向くことなく
飛び去った


傷は付かなかった
あたたかさは奪われなかった
家に至る
二本の径


選ぶまでもない戸惑いのなか
陽を持たない暮れは来て
粉を空に振り撒いて
羽の行方を描き出した


枝と空の生む音が
雨になれずにはばたいていた
墓の森 水滴の森
壊れては増え
地平線を覆う


貝の内側のような憎しみが
夜から夜への轍をいろどる
ゆるやかにゆるやかに
離れる海


曲がり角に立つものが
片目から葉を流している
三叉路をすぎる足音
水たまりから飛び立つ音


雨になれぬ羽
羽になれぬ雨
どちらの姿にもなれぬまま
雨と羽のなか激しく
うたはうたに降りそそぐ
























自由詩 うた わかれ うた Copyright 木立 悟 2015-01-26 15:03:06
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