少女のゆめ
衣 ミコ
朝には明星
鼻先をかすめる風は
五つの星と三日月の旗を
掲げた彼の地で生まれ
古の道筋に誘う
一滴の恵みも無い砂漠の
明け方何処ともなく現れた
灼熱の大地をやさしく包む
虹を見上げて旅をする
高くに舞う鳥と共に
夜には幽月
左右対称の模様を
身体にあしらった
黒い蝶の群れが
双の眼前に湧き上がる
羽ばたきの向こうに在る記憶の日
救いがたいものも全てが
幻の国へ返っていった
誰もが眩暈を覚えるほどの
恍惚に満たされて
ゆめを語る
ベールで顔を覆った少女の
真実を知る者はいない
微笑んだ口元を垣間見た者の
瞼の裏に
きらやかな
星と月の残像だけを残して