金網の外へ
天野茂典
サイコロを振った
吉とでた
月と河童
昭和に青春を送り
平成でこけた
死が怖くなった
たとえ河原乞食になろうとも
怯えることには変わりはない
禍々しい苔
水分を含んで
森に眠る
姫
あんなに孤独な月がでている
河童も住めない
大地 と呼べるか
姫
交わろう
月の裏側で
温めあおう
ローカルバスが暗すぎるので
本も読めない
死を逃れる術は
エロスしかない
ポルノグラフィティではなく
暗いところで
エクスタシーをあじあおう
姫
疲れた
愛がほしい
ことばでも
からだでも
なんでもいいから
愛がほしい
そうだ 河童の川流れ
チョモランマから
マリアナ海溝までの距離
流れ 流れて 流されてゆけばいい
垂直的地理学も吉のうち
サイコロを振れば また吉がでる
消防車が愛の火消しに たとえ
100台集まったとしても
姫 手を取りあって逃げよう
金網の外へ
2005・02・04