口笛(二)
川瀬杏香

奇声を発しながら
夜道をゆく彼女を
奇異的な目で
見ていた私は
それでも彼女に
親近感を抱いていた

何故なら
患っている部分は
同じだと
感じていたからだ
そう
私も彼女も
何も変わりはしない
ひとつ違うのは
悪い言い方をすれば
彼女は運に
恵まれなかった

月日は流れ
彼女も年をとり
私も社会に出た
ある夜
私は溜め息まじりに
口笛をふきながら
ペダルをこいでいた

穏やかな表情で
自転車に乗る彼女と
すれ違った

2009/04/17


自由詩 口笛(二) Copyright 川瀬杏香 2015-01-24 22:00:33
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