行儀のよい命
衣 ミコ

(言葉の意味を失っても僕たちは生きられるだろうか。)

フォアグラの味を覚えて
肥満鴨の生涯を忘れるみたいに
受け止められない感情を前に
そっと目蓋を閉じる

高級な言葉を奥歯で噛み締めてみる
ぎりぎりぎりって歯が欠けちゃうくらい
美食家たちの狂宴の隣に並んで

養鴨場の屋根に止まった番いの燕が
雌雄別にレーンに並んだ
鴨たちを見下ろしながら
季節の移り変わりを告げる

四季が無いてらてらとした口元に
運ばれてゆく行儀のよい命に感謝する
目蓋を閉じて祈りの中で

(言葉の意味を取り戻した僕たちは無敵だ。)


自由詩 行儀のよい命 Copyright 衣 ミコ 2015-01-22 21:41:31
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