大層な砂利銭
北井戸 あや子
気が付いた頃から、神社や寺で金を投げ捨てる行為をしている
よく意味も解らずに
その行為が一体なんの足しになるのかと
頭の片隅に追いやられた疑問符だけは理解している
その腹をはち切れそうな程に満たした財布から
硬貨が減るたびに
よく解らない何かが胃の中に落ちてくる気がして
少し不愉快な気分になる
無駄遣いするなといいながら
あの道端の溝を飾り付けた様な箱を見つけては
金を投げる両親がどこか可笑しく、別人に思えることは
なんら変わりない日常の一コマで
形も見えず居る証拠も無いモノに
何故そこまでする必要があるのかと
疑問を投げる脳ミソを捏ね回して
そんなもんに金払うなら自分に使うほうがよっぽど幸せになれるじゃないか、と
あまり捻りの無い返事を返したその瞬間
信じるのに金がいるのは人間相手だけではないという事実が
割れるほどに研ぎ澄まされた泣く風と共に突き刺さり
たったそんな事がとてもかなしくて
きっと私は一生この行為の意味を理解できないんだろうな、と
そう思う傍らで、カラカラと楽しげに滑り落ちていく五円玉を
だんだんピントがずれていく両目で見届けていた