メケ
ただのみきや

天が地を柔和に踏みつけると
アラユル路が神経回路としての機能を失った
メケ 限りない劣情に踊る旗
標識たちは無言で主張するそれは真っ当なことだろう
生きている人にとって生きていると言うことぐらいに
埋め尽くされて顏も形もない
微かなオトが雪を踏ミ 占メル
モノ皆凍らせる逆光線に薄紅ロッカッケイが漂い
出会いがしらの事故を予感させ自我は立ち眩む イイね
物乞いから奪う気持ちで血で固めた砂の貨幣を投げ与えなければならない
あらゆる現象も情報も言論も疑いながら一から十まで丸呑みにして
腹を壊しながら何の算段も商談もなく被弾しているおれは称賛/勝算なき
一人称の散弾銃として斜塔から冷たく睥睨する青いトマトを齧りながら
運命論的包囲網をすり抜ける黒メッキの呼吸が子どもたちへ波紋する
傷のない素肌を縫合しなければならない逐一チクリ
堕胎せず世界に刺青しなければならない濃くイッコク
時間を屑籠にした未来を否定して全力でキャベツを千切りにする残像だ
撹拌されている必ずしも時系列通りと思うな撹拌されている
旗はあるだけだ泳いでいるのは風であり風はおまえであり
おれは卵を割るだけだそして気怠い午後に備えて甘い鞭/無知で
武装した無法者の子孫として幼気なおもちゃを密輸し続けなければ
ならないナラナイノダ強迫観念でも固定観念でも諦念でもなく
メケ 天からの自由がおれにレイズさせる
一個のポーンとして摘み上げる
おれはおれを置く刺し違える力もないひとつの捨身の主観として
記憶を啄まれている餌台の上に置かれた生首のア音の口形から
三日前の比喩がムラサキに羽化し問いかける
人ならざるモノへ変化する過程としての言葉の有り様が
滑り落ちる目から耳へ生まれたばかりの蛇がウツボカズラを滑るように
嵐だ吹雪だ人外の祭りだ愛人たちの共演だ火柱だ人柱だ
桜色の網膜を切り裂いて来い!闇詠む夢止み黄泉病む弓呼ぶ意味ヨム意味よ
カステラを切り裂いて時間を切り裂いて断面しなければならない
能面のままキスをする切り裂くカシミヤの騎士として
伝統的な白い餅をうまく人に仕立て上げ言論や風刺のふりをさせろ
騙し合うすまし汁に静かに沈む戦艦のように旗から旗へ伝授せよ
九十九里の撫子が春に孕む姫の秘め事を手繰り合う歌会のエロチシズムで
血染めの哀で愛し合いながら悲鳴を譜面に起こせ不在のまま閲覧禁止せよ
そうして真中から破られよ慣習としての藁人形に目鼻口をつけろ
意識下層から拾い上げ投石機に結わえられた一己のイシが
世界を一周して後頭部を打つロケット弾的感嘆符も疑問符もなく
うずくまり果てるまでシのラのソの詩の裸の其の死の螺の苑で
いのちの乳房が実在だ真実だと口にすればするほどあやうく萎みだす
哲学的落胆へ注げ清浄なるスピリッツを無形の器を拡張せよ
脱いで脱いで時間の裸形を知る印とし得るそしりをあさり酒で蒸されるな
肌色のシのぬらメケるこの未完無垢なオレンジの煙る廃屋で消去されるな
おれの字の仕損じた灰を約束の土地へ負けるように撒け詩にモノ狂え
メケよニケよウラニウムよ齧歯類よ過去よ月の湖岸よ骨よ白痴よ
踏みつけにされた足下から呪いのように囀る理性を蝕む甘いものノケ
メケ! 逆巻くメケ捲るめくメケよ!起死回生の隠語魔単語




                   《メケ:2015年1月18日》









自由詩 メケ Copyright ただのみきや 2015-01-21 20:27:10
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