赤いモペット
梅昆布茶
友人の車のターボチャージャーがいかれて修理に15万ほどもかかるので
通勤の足の無い友人に僕の車を貸してある。
僕はといえば通勤は自転車で5、6分歩いて10分というところなので
日常的に自分の車にはほとんど乗らないしあまり所有する意味もないのだが。
でもちょっとした足が欲しいと思っていた。
そんな折り隣町の街道筋にあるバイクショップで素敵に古いモペットを見つけた。
モペットというのはおもにヨーロッパで親しまれるペダル付きの軽便なオートバイの総称。
TOMOSというスロベニアのメーカー製で
年式はわからないし店では骨董品扱いで現状渡しで良いのなら
いくらでもいいよと云われたので安く譲ってもらい
ナンバーと保険をかけてすぐかぶって停まってしまうエンジンをだましだまし
半分はペダルで漕いだり押したりしてなんとか家まで運ぶ。
ヨーロッパの映画などで美しい女優さんが古い町並みを背景にSOLEXというフランス製のモペットでかろやかに走るシーンなども思い起こされる。
すぐに乗れる代物ではないし
スピードもせいぜい40kmぐらいしかではしない。
これからレストアが専門の友人に相談しつつ
復旧させてゆく楽しみあるいは苦労が
駐車場の自転車の隣り合わせにやや錆び付いて休んでいる。
でもかなり軋んだりがたついたりする
油の切れかけた誰かさんにも似た
赤い古いモペットは
僕の日常の背景を
きっといつか走り抜ける筈だと信じているのだ。