混沌とした歓喜
木屋 亞万

大地と海が溶け合って
海洋生物は都会を目指す
ビルは大きな花となり
摩天楼に大輪が咲く

イルカが跳ねるたび
めくれかえるアスファルト
クジラの尾びれが歩道橋を砕いて
鉄骨の突き出たコンクリートが
ぼたぼたと車道に落ちる
地下鉄の駅で頬の横をかすめる大量のいわしが
電車のライトにきらきら照らされ
今日もまた魚のせいでダイヤが崩壊する

サバンナの生き物は海へ
大波のトンネルの中をチーターが駆け抜ける
その先には青いシマウマ
白い波しぶきと深い青のしましま
波間に肉食獣の咆哮
ゾウの甲高い声もする

人間が独占していたあらゆる場所に
他の動物が足を延ばし始めたら人類の時代は終わる

電力はすべて底をつき
冷蔵庫も洗濯機も電子レンジも瞬く間に虫の息
昆虫の寝床になっていく
朽ちたものはすべて生き物にささげられ
朽ちないプラスチックは砕かれビニールは裂けた

どの生き物に尋ねても
きっかけは人類が禁断の果実を食べたからだと言う
他の生き物を食わずしてどうして生きていけるだろう

天と地が溶け合って
あらゆる棲み分けが崩れてなお
困っているもののほうが少ない


自由詩 混沌とした歓喜 Copyright 木屋 亞万 2015-01-18 13:01:57
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