虹色リボン
衣 ミコ



沢山の色彩に溺れて、姿を見失ってしまった。少女の髪には、虹色のリボンがたなびいていた。(嘘でも好きな色を選べばよかった)と、はにかんで笑った。何と言ってあげればよかったのだろう。
誰かが嘘つきになったわけ、誰かが嘘をつき続ける理由。こんなにも大勢の人混みの中、人通りが少ない道をいく。彼女にとって隣の庭はいつも、真っ当に青々とした芝生が茂って、眩しかったんだろう。
(探さないでください) 遠ざかっていく陰を帯びた背。交差点を渡る沢山の色彩に溺れて、姿を見失ってしまった。無言の嘆願のように、不安げに揺れる七色のリボンが、瞼の裏に焼きついて。

「きみに光を分けてあげる」こえを、ください

明け方、一羽の鴉が羽を広げる。やがて僕の視界のすべてを飲み込んでしまう、黒い。あの時そばに駆け寄って、傾いたリボンを結い直してあげていたら。



自由詩 虹色リボン Copyright 衣 ミコ 2015-01-18 04:20:06
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