茜の記憶
石田とわ



     薄暗い台所で
     小さなボールを抱え
     温めた牛乳を昔ながらの泡立て器で
     けんめいに泡立てる
     しゅんしゅんしゅんと薬缶が
     今にも飛び出しそうに呼んでいる
     戸棚からインスタントコーヒーを
     ひっぱりだし、ゆっくり熱湯を注ぐ
     泡立った牛乳をスプーンですくい
     たっぷりとのせてゆく
     薄暗い部屋は夜に近づこうと暗さをまし
     コーヒー片手に電気をつけようと
     ふと外を見れば
     稜線が茜に染まっていた
     何かを思いだしそうになり、
     慌てて部屋中の電気をつけた
     コーヒーは熱くて苦かった


           




自由詩 茜の記憶 Copyright 石田とわ 2015-01-14 00:41:02
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