猫かぶり
やまうちあつし

人づきあいは苦手ゆえ
頭に猫をのせることにした
出会う人たちは皆
頭の上の猫に気を取られ
(毛並みをなで
 喉をなで
 さかんにじゃらし)
私のことは気にも留めない
そのすきに私は
契約書をまとめたり
曲がっているネクタイを直したり
あるいは勝手に
バストサイズを測ったりする
そんな暮らしが続いたある日
頭上の猫がへそをまげ
どこかに逃げていってしまった
とたんに私は元の木阿弥
出会う人らは私に対し
怪訝そうな視線を向ける
いたたまれずに私は駆け出す
逃げていった猫を探しに
だめだ、人間の前に
猫に好かれるすべがなくては


自由詩 猫かぶり Copyright やまうちあつし 2015-01-12 11:24:13
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