Clock:
竹森

枯草が、湿り気を帯び、奪われた割れる音、
だけが取り残されたように、
平野で歌う、小鳥たちの嘴が、微かに、発泡して、

杖の、一振りで、凪いでいく、象は、
地平線に帰り、月の粉末は、その跡に降り積もる、
土に血で触れる、兵士たちが見たのは、本当に、
満天の星空、でしたか、私は、
ここで、象を撫でながら、あなたを見ていない、
人になら、なれる、

言葉が意味を成さなくなってから、
羊皮紙の裏側に滲むインクが、
込められた感情の大きさを語り始める、
婚約指輪を抜いた、幼妻の薬指に、宿す、
左右対称の、蝶々の翅の軸は、間違っても、
数学の道具にしては、いけなくて、
今夜はとても、星がきれいなのに、
望遠鏡のレンズを、いくら絞っても、
地平線の向こうには、焦点が、合わなくて、

乾いた枯草で手首を切り、流れ出た血を啜る、
ように、生きていけたなら、
と、誰も読まないように、長い、長い、言葉の羅列、
その中に隠された掌編を見つけた怠け者は、
ようやく自身に名前を授け、どれだけ、
抜いても、生えてくるので、一本ずつ、
千切っては、ひたいに貼り付けていく、私の、
長髪で、象は、瞼を降ろし、
赤い瞳は、黄色く、黄色く、
夜空へと、沈み、

丘の麓に、
これから満ちるのは、
静寂と、
海水と、
どこからともなく、
どこへともなく、
湧き出てくる、
あなたの、
もの、ではない吐息、


自由詩 Clock: Copyright 竹森 2015-01-12 02:22:32
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