穴蔵に住まうもの
石田とわ



      ただそれだけのはずだったのに
      暗い穴蔵へ落ちたのだった
      夜を千倍にして流しこんだような
      なにも見えない本当の闇
      一瞬の過去を喪い、
      未来は醜く捻じれ歪んだ姿で現れた
      どこでどうすごしたかわからぬまま
      いま、此処に在る
      穴蔵へ落ちる前と変わらぬ世界

      あれ以来、わたしの背中に魔物がへばりつき
      耳元でひそひそと善からぬことばかり囁いている
      もう穴蔵へは行けないよと
      くり返し、くり返し言い聞かせるが
      聞いているのかどうかも怪しいものだ

      この魔物が背中から消える日が
      いつかくるのだろうか






      


自由詩 穴蔵に住まうもの Copyright 石田とわ 2015-01-09 22:55:36
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