憧れ
草野大悟2

追い求めていたものが
幻だった、とは言わせない
きみは
きみのままに
ぼくのところに
きたんだから。

追い続けていたものが
壊れてしまった
などと
絶対に言わせない

だれにも
なににも
神にさえも

言わせない

なまいき
という
名のきみは
いまでも
生意気か

いまでも
ミニョンのように
誇らしいままか

初めて出会ったふたりのままに

中二の桜は
ぼくには、とっても大きな意味をもっているが
きみには、どんな色をもっているんだろう
あのとき
たしかに
ぼくは
きみと
目が合って

きみの笑顔としろい前歯とショートカットの髪と大きな瞳と

がーん、という音をたてて突進してきたんだ
ほんとに
衝撃的出会い、という表現以前のインプリンティング 刷り込み ね

好きになったんだ
うーん、大好きになった
一目見たときから
大好きに

嘘っぽい、と
きみは笑うけど
そんな中二の男子がたくさんいたことを
きみは知らない

ぼくが、たくさんいたんだよ、と教えると
へーっ
意外そうな顔をする

きみは
きみのきみを
知らないまま
大人になって
ぼくと一緒になって
子供を産んで
孫ができて
そして
いま
寝たきりになった


自由詩 憧れ Copyright 草野大悟2 2015-01-08 22:21:46
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