クーの正月
ふわふわ


頭の少し上、左の方に、誰かのわらう顔が見えておりましたが、
私は幸福にも柿を持っておりました。
柿を持っておりますと、クーという犬が側にやってくるのです。
何年か前死んだ、少しみえっぱりの犬です。
みえっぱりなので若くに逝きました。
少し困ったようにふるえておしっこをして、ぽっくり逝きました。

そうそうそのクーが、柿をたいそう好んでおりまして、
今日はクーの正月だったのです。
私にはたしかに、人のわらう顔が見えますが、
代わりにクーの、毛の一本間違わず、姿が見えます。

頭の高さで手をぽんぽんと撫でるようにしてやります。
嬉しいのは柿があるからでしょうが、クーは目を細めてしっぽを振りました。

そんな幻影も見える私の脳です。
とても暖かい日差しでした。


            2015.01.04


自由詩 クーの正月 Copyright ふわふわ 2015-01-05 13:25:35
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