ぼや@66丁目
香椎焚
詩がかけなくなりました。
あれほどあふれていたはずの言葉が
きれいさっぱり去ってしまって
現実だけがここに在ります。
ええ、ええ、健康です。
今までにないくらい、正常で清浄です。
なにせ何もしていないのですから。
一日一日、現実を生きています。
今晩何にするかなとか、冷蔵庫にトマトはあったかとか。
進まない仕事にどう弾みをつけるか、とか。
彼と仲直りしよう、とか。
たとえば、きれいな一本道に、枯れ葉が落ちているとします。
すると、ああ落ち葉だ、と思うわけです。
川沿いの夕暮れが美しかったとします。
きれいだなぁ、と感嘆するでしょう。
久しぶりに祖母とテレビ電話をします。
おばあちゃんが好きだなぁ、と実感します。
それだけなんです。
あれ、と思うわけなんです。
なぜそれ以上出てこないのか、と。
日々が過ぎていくので…
これが待ち望んでいた平和でしょうか。
ああ、だのになぜか。
違和感の方がつもってゆき、
この身体が、でくのぼうな気がして、
自分はもう、いなくなってしまったように感じて、
スッと消えたくなるわけです。