クリーニングのクリスマス
やまうちあつし

イブの夜
イエスが店にやってきた
長らく預けたままだった
聖骸布を引き取りに
「お客様、すみません
 こちらについたお顔の跡は
 どうしても洗い落とすことが
 できませんでした…」
イエスはしばらく眺めていたが
やがて黙って去って行く
ふと気が付くと
カウンターには十字架が
追いかけようと思ったが
イブの夜は何かと忙しい
そのうち取りに来るだろう、と
壁にぶら下げ「お忘れ物」の貼紙
そしてそのうち
本当に忘れ去られる
こういうわけで
二丁目角のクリーニング屋には
今でも銀色の十字架が
静かにぶら下がっている


自由詩 クリーニングのクリスマス Copyright やまうちあつし 2015-01-04 19:25:36
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