クリーニングのクリスマス
やまうちあつし
イブの夜
イエスが店にやってきた
長らく預けたままだった
聖骸布を引き取りに
「お客様、すみません
こちらについたお顔の跡は
どうしても洗い落とすことが
できませんでした…」
イエスはしばらく眺めていたが
やがて黙って去って行く
ふと気が付くと
カウンターには十字架が
追いかけようと思ったが
イブの夜は何かと忙しい
そのうち取りに来るだろう、と
壁にぶら下げ「お忘れ物」の貼紙
そしてそのうち
本当に忘れ去られる
こういうわけで
二丁目角のクリーニング屋には
今でも銀色の十字架が
静かにぶら下がっている