通訳者が教えてくれたこと
板谷みきょう

フォークシンガーとして
国際交流会場でアトラクションの
依頼がきていた頃の話

ネパールと日本の
国際交流アトラクションで唄った後に
通訳を介して子連れの女性が
「是非、日本の代表的なリズムを
息子に教えて欲しい。」と
話し掛けて来た

日本の代表的なリズム・・・
日本の代表でも何でも無いのに
ボクには
無理難題以外の何物でも無い話しだ

戸惑い悩み
やっと出て来たリズムは
テーブルの端を叩きながら
「ドンドン、ドンタカタッタ、ドドンがドン」

彼女は、メモ帳に
「ドォンドォン、ドン タカタッタ」と
片言で言いながらペンで書き記し
10才位の息子に、一緒に叩くよう真似をさせた

子供と一緒にテーブルを叩いて
暫くすると
その男の子はリズムを覚え
一人でも叩けるようになっていた

息子にテーブルを叩かせながら
通訳を介し今度は
「このリズムで日本の歌を歌って欲しい。」と
彼女が言ってきた

ままよとばかりに
思い付いた歌は「北海盆唄」

ハァー北海名物(ハ ドシタドシタ) 
数々コリャあれどヨー(ハ ソレカラドシタ)
おらがナーおらが国さのコーリャ
ソレサナー盆踊りヨー
(ハァ エンヤーコーラヤット
ドッコイジャンジャンコーラヤヤット)

日本語を知らないのを良いことに
一番だけを何度も
繰り返して唄い続けた

テーブルを叩く彼女の息子も
安定してリズムを叩く

気付けば歌に併せて国際交流に
参列していたお洒落に着飾った年配の
上品な女性や男性らが
輪になって踊り始めていた

すると、先の婦人が
明らかに興奮した口調で

「あなたは、素晴らしいシンガーだ!
アジアで近代化した先進国の日本と思ってきたのに
あなたの歌ひとつで
まるで未開の人ように同じ仕草で
輪になって踊っている!」

ネパール国の面積は北海道の1.5倍


自由詩 通訳者が教えてくれたこと Copyright 板谷みきょう 2015-01-02 23:28:33
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