みかんを剥いてスジを取りながら、
動物に食べられるために存在しているような不思議な
みかんの実を食べる。
みかんを剥いてスジを取りながら、
果物の好きな母が夏みかんを剥いているのを見ていると、
果肉だけにしたものを外皮の皿の上に乗せて私や兄に与える姿を思い出して、
みかんの実を食べる。
みかんを剥いてスジを取っているときみが寄ってきて
「きれいにスジも取る性格なんだ」と言うので、
「いや、別にどっちでも気にしないよ」と答えると笑われたことを思い出しながら
みかんの実を食べる。
みかんを剥いてスジを取っていると、
スジをきれいに取ったりコップを並べるときに絵柄をそろえたりする姿を見た人に
「几帳面ですね。A型でしょう」と問われ、
「いや、別にどっちでもいいんですけど暇だからやってるO型です」と何回くらい答えたのかを思い出しながら
みかんの実を食べる。
みかんを剥いてスジを取りながら、
種すらなくすように品種改良された植物ってどんな気持ちなんだろう? と考えるものの、
じつは人間に食べられる植物は自然に生えるよりもたくさん繁殖に成功していることに思い至り
みかんの実を食べる。
みかんを剥いてスジを取りながら、
子供のころは10個くらい平気で食べていたこいつらのおかげで酸いものと甘いものの違いを学んだのみならず、
酸っぱいものがあるから甘いものに当たると得した気持ちになるのだなあと
みかんの実を食べる。
みかんを剥いてスジを取りながら、
いつか自分は完成することがあるのだろうかと
みかんの実を食べる。
○
おかんを剥いて筋を取る
じかんを剥いて数字を取る
やかんを抱いて無事を祈る
さかんに抱いてと言われてみたい
やまんば抱いて後悔する
しゃらんらーではメグ派?ノン派?
○
民間人と蜜柑人はなんとなく似ているので、皮を剥いて食べようとしたら殴られた。
「蜜柑人ってなによ?」と問われたので、愛媛っぽい人と答えると、「和歌山人だってそうだろうが」とどこかから野次られた。
「じゃあ蜜柑狩りは民間狩りになるから、お前らを今から狩る!」と、民間人じゃない人たちが槍をもって集いだした。
「なんだかおおごとになってきましたね」と隣にいる蜜柑人が言うので、きっとみんなビタミンCが足りてないのだよと答えると青くなった。
有田さんも愛媛さんも真っ青になってしまったのでとても酸っぱい。
尻の青いものは狩れないので民間狩りは失敗したようだ。
蜜柑ですか。 未完です。
○
ああ知ってる
お前は
ひとふさひとふさ
じっくり食べられたいんだろう?
しかしそうは問屋がおろさないのさ
ぐちゅっとふたつに叩き切って
ギリギリぎゅうぎゅう絞るのさ
●とよよんさん
「あいつらは、皮も剥かず、半分にぶった切ってから汁だけを絞り取るという行為を行っています・・・」
「そのようにグレープフルーツを扱うとは・・・なんという残虐さだ!あのひとでなしどもめ」
「隊長、奴らは知りません、グレープフルーツ軍曹をぎゅうぎゅう絞ると大変な苦い事態が生じるということを…。」
「うむ、これは使えるな。」
そこへ大量のミツバチの蜂蜜絨毯爆撃
かわして焼酎のソーダ割りへダイブ
●とよよんさん
「こうなれば、蜂蜜との相性を悪くさせるさらなる苦味を発展させようとしたのですが・・・」
「いったいどうしたというのだね?」
「やつら、ピンクグレープフルーツとやらを開発しました」
「ぴ・・・ぴんく!」
カツン…カツン…カッ
「私を忘れてもらっては困るわ」
「ル…ルビー少佐!」
肩にかかる蜂蜜色のウェーブ
「ピンク少尉には精製したサラサラのグラニュー糖がお似合い…蜂蜜は私の獲物よ」
●とよよんさん
「とりあえず私たちに共通した問題はこういうことね
――皮が厚すぎる!――
だから剥いてもらえない」
「夏みかん将軍!」
ひんやりとした夜の帳が戦場に降りてくる
柑橘たちは
薄皮を剥かれ
あるものは白っぽい煮物の飾りに
ふうわりと立ち上る湯気
あるものは湯船に浮かび
束の間の休息
●とよよんさん
「お湯はええどすなあ。みなさん絞って飲まれるだけええやおまへんか。あてかて剥かれて食べられたいとは思うんやけど、ちょいと香りに使われるだけですのやでぇ」
ゆず姫様はそう言って、
涙を流すのでした。