幸福
葉leaf
――K.F.へ
あなたの体に鋭い輪郭はあるのだろうか、そしてあなたの心に? 空気も光も柔らかく、あなたと混じり合いながら跳ね回る。あなたは驚いたような顔をしたり人を見つめたり泣き始めたり手足に力を込めたり、まったくの偶然のようにこの世に挑んでいる。あなたは私たちの見えない乳房を吸い尽くし、痛いほどの幸せで空気を染め変えてしまうのだ。
あなたはたくさんの幻を背負って生まれてきたが、どんな重い幻でも羽の軽さに変換し、どんな冷たい幻でも肌の温かさに変換する。幻はすべて無垢な身体により蒸留され純化され、人々に乗り移ってはたくさんの笑顔を生み出す。あなたは一つの病原体だ、幸せと笑顔を伝染させる、生命のいたずらだ。
あなたは生きている、全ての記号から免れた生を生きている。文化や社会はいまだあなたに到達できない。あなたの体と心に対して、全ての論理や倫理は太刀打ちできない。だがあなたは少しずつ変化していく、混沌が一層その混迷の度合いを増すように。あなたの不規則な移ろいがいつか規則に変換されるその日まで、私たちはあなたの生に希望と恐れを抱き続ける。
あなたは私たちから心の枢軸を奪ってしまったので、私たちは皆あなたに特殊な恋をしている。あなたは周縁にありながら一つの中心をなすものであり、その聖なる心と体の襞にみんなを巻き込んでしまった。あなたは天使、私たちから隔たりながら、その隔たりを狂おしく欲望させる、幸せと恋と笑顔とを司る弱すぎる天使。