慌て者
イナエ

きみが奥さんを残して
年の瀬も押し迫った雪の日に
ひとり先に逝ってしまったと
知ったのは娘さんからのメール

一昨年の夏 
共通の友の斎場で会ったときには
「お互いいい年だから葬儀には来なくて良いよ」
と寂しく言い出たのはきみ
ぼくも同意はしたけれど
どうして急いで逝ってしまったのだ

だがこの正月に 
きみから届いた年賀状
「本年もよろしく」の印字に
 まあ何と念の入ったことよ
 直筆で「機会を作って逢いたいね」
とは…

言っておくけれど ぼくは
君が鬼界で作る機会など
はなから「欠席」だからね

花の季節まで
ゆっくりしていてくれたなら
此岸で機会を作れたものを



自由詩 慌て者 Copyright イナエ 2015-01-01 17:49:29
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