年末年始のご挨拶に変えて
ただのみきや
世界がひとつの終末へ向かって集約されて往く時代
世界はひとりの詩人の透明多面性により屈折分散する
時空を超えた鳥瞰図は迷える自我を慰めても
空腹に泣く赤子ひとり救えはしない
言葉は時に力 時に愛 そして希望
言葉は時に無力 時に仮面 無垢な詐欺師
自分が幸福だった時代を思い出すことはできても
世界が平和だった時代を思い出すことはできない
いままでもこれからもいつまでも
しかし愛や平和について人はこれからも
語り 書き記し 掲げ 叫び
時にいのちを捧げるだろう
それは消えない癒えない傷のように
魂を引き裂く痛みを人に与え続けるから
決して絶えることはない
甘いヒューマニズムの脂肪を削ぎ落とし
骨すら残らず焼かれたとしても尚
飛べなくなった雁が足踏みに過ぎない歩みで
猛禽の前に姿を晒すように
プラカードも持たず
シュプレヒコールも上げず
銃で武装することもなく
己の生命を掲げ主張し続けるだろう
まだ見ぬものを
赤ん坊のように抱きながら
共感と利害は必ずしも一致しない
理想と現実は実体と影のよう
どちらがどちらかを決めるのは自分
とやかく言うのは他者
矛盾の油膜が覆った海で
それでもこどものイルカが遊ぶように
跳ね上る
落ちることを
繰り返す
終わりが来るまで
世界がひとつの終末へ向かって集約されて往く時代
世界はひとりの詩人の透明多面性により屈折分散する
《年末年始のご挨拶に変えて:2014年12月31日》