服部 剛

頬をなでていった、風を
振り返った遠い背後の道で
独りの樹は嬉しそうに、葉をゆらし
無数のみどりの掌は
こちらに合図している

この足もとに伸びる人影が、口を開く
(見エナイ世界)を呟くように

――どうやら全ては互いに
  引き合っているらしい
  人も、花も、真昼の月も
  過去や未来の筋書きも

そうして
私から、あなたから、この世へ
蜘蛛の巣状に張り巡らされる
不思議な糸

今日もそよ風に、たゆたう  







自由詩Copyright 服部 剛 2014-12-30 23:59:56
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