心の蓋トリオ
とよよん




蓋をした心のすぐそば、吹き溜まる感情の渦が
縄張りを広げている。

やがて渦が傷を付けて、
肉腫となり生み出される
ふたつめの心。

夕方五時のサイレン
あの角を曲がると、
開いてしまう古い心の蓋。

むくむくと這いだす黒い獣、
あの日の光景を、感情を、
まざまざと、見せつけるから。
涙を溢れさせるしかない。

ふたつめの心は冷静で、
本家の様子をただ見つめ。
細胞を通して伝わってくる、振動を。押し殺そうとしている。


**

夕方五時の合図にスピーカーから音楽が流れる街に住んでいる
公園の子どもたちはさようならをして家へ向かう
お腹が空いたからおやつにしようかな
ご飯が食べられなくなるかな

五時の音楽を聴くと
私の本物の心の蓋が開く
すると邪悪な記憶に襲われるから
泣きながら帰るしかない

隣の新しい心が
ぴかぴかの鈍い光を放ちながら
呆れ顔で見つめているけれど


***

蓋をした心はパンドラの箱

をなぞって開けたくない。

きつくきつく鎖で束縛して
つまりゆく欠陥、血管を。

くすむ顔色、血の気失せて


自由詩 心の蓋トリオ Copyright とよよん 2014-12-29 21:59:53
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