夜とはばたき
木立 悟






人指し指
中指の息
硝子の欠片
それぞれの目に
異なる子のうた


うなじから背へ
ひろがる岩
空へ還る痛み
怒り 苛立ち
羽から心へ過ぎてゆくふるえ


花の雨のなか見捨てられ
目より高みのすべてを憎んだ
何よりも深く
自身を憎んだ


霜柱の顔が泣きはじめるとき
羽は無数なのにひとつで
風を矢に放ちつづける
岩門が夜に潤うまで


積み上げられ 崩れることなく
他を揺らし照らすうたの群れ
灯の浪のなか沈む城へ
繰りかえし突き刺さる闇飛沫


見えぬほど遠いはばたきから
絶え間なく暦が打ち寄せる
文字に生えた羽ひとつひとつを
花に花に呑み干しながら


白い灯が
すべてを残らず見せてゆく
桃の香を
夜へ夜へ押しのけてゆく


犬は
鳥のかたちの火を見つめていた
近づくこともできず 凍えながら
ぱちぱちと砕ける羽を見ていた


取り除くことのできぬ部位に
標のように刺さる刃
羽も花も雨も火も
ただ映りながら過ぎてゆく
背中を照らし 過ぎてゆく























自由詩 夜とはばたき Copyright 木立 悟 2014-12-29 16:05:12
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