星の流れる夜に
梅昆布茶

星のながれるよるに静謐のくにへ往ぬるもの達の齢をかぞえる

ささやかにいのちを刻む時計台の街に棲む

難破船はたぶん航海を夢見ながら座礁したままで生きて行く
いつか補修するあてをこころの糧に

積極的な喜びを求める訳でもないが辛くもないともおもう
けっこう小さな楽しみを拾うのがうまくなった

日常はドライバーという職業がら配車責任者次第で
シフトがいつも組み替えられ休みはかなり不定期だ

そんなとき後輩から突然の着信が入る
以前の会社の部長から彼の退社は耳にしていた

僕のこと覚えていますか
もちろんさ忘れてはいない

いまガス欠で立ち往生していること
なかなか仕事がみつからず家族からも見離されかけていること
煙草を買う金もないらしい

とりあえず友人から5リッターの金属タンクを借り
燃料と幾ばくかの金を持って車で15分ほどのアリーナの駐車場へレスキューに向かう
夜勤の明けなので本当は缶チューハイでも飲んで寝てしまいたいところだが

自分の子供とさして変らない年齢の後輩
ただ体格だけはレスラー並みでちょっとこわもてな奴
ラップのイベントのプロモーションなど手がけていたという
ちょっと異色な経歴の持ち主だったがあまり深くつきあった記憶はない

いっとき羽振りの良かった彼はでもまだ31歳
世間的にはモラトリアムの目こぼしの範囲かもしれないし
一緒に同乗した時は携帯ばかりいじっているしサイテーの若者とおもったが
まだ俺より可能性はあるのだそれでもちょっと尻の穴を蹴飛ばしてやったが

素直な若者は星の数ほどいてそれに道筋を与えられない国家があって
僕はちっとも今時の若者は・・・とおもったことはない。( まあそれは嘘だが。)

義理と人情と氷川きよしも受け入れる感性をもって生きてきた
同時にビートルズ、ストーンズ、東京オリンピック、東海道新幹線
YMOと共存してきたしAKBも秋葉のカフェの前をとおるし隣のガンダムカフェも
ようわからんがこれがこれからの日本の輸出品かなんて感慨もしばし抱きもする。

はるかに容量を超えた豊穣のしらべを聴かんと耳を澄ます

坂を上りながらふとふりかえると雲が手をふる

ときどきこのまま人間のかたちをしていて良いのか考えてみる。


散文(批評随筆小説等) 星の流れる夜に Copyright 梅昆布茶 2014-12-27 20:56:54
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