街灯夜想
北井戸 あや子

街灯はひとりぼっちで
ぼんやりと俯いている
その下で僕もまた
俯いて本を読んでいる
街灯に寄り掛かって
時々落ちてくる
蛍光灯の燃える音を
悴むこころで捕まえる
白く息をひとつついて
マフラーを鼻先まで引っ張りあげると
風が迷子の手を引いて
急ぎ急ぎに横切っていった
頁がぱらぱら捲られて
僕は少しだけ苦笑い
ふと目が写した一節は
「おまえは独りが好きな奴だね」
思わず上を向き笑う
お前といるからひとりぼっちじゃ無いよなぁ
街灯はちかちかして
蛍光灯が音をたてる
それが拒絶の意味だとしても気にしない
別に独りだって死にはしないさ
僕はひとりぼっち
街灯もひとりぼっち
星も、空も、アスファルトも、スニーカーも
みんなひとりぼっち
それがそんなにかなしくないのは
僕が変だからなのかな
また来たら、その時は
寄り掛からせてもらうよ
じゃあ、またね


自由詩 街灯夜想 Copyright 北井戸 あや子 2014-12-26 23:38:19
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