前を歩いていたあなたは
病棟をつなぐ廊下の途中で　
ちょっと振り返って
「じゃあね」と
奥の扉に入っていったきり…

少し左肩を上げ　
口の左端を上げてほほえむパジャマ姿の
あなたにカメラを向けたとき　　
手で遮り
　　止めてくれ　
　　世の中へは元気な姿を残したいから
わたしは約束した
　　わたしの中では何時も元気だ　と

その言葉通り
あなたの名を思い浮かべれば躍動するあなたが
たちまち
たとえば
光に充ちた広場でボールを追っているあなたが
歳若い人の輪（サークル）の中でギターを弾いているあなたが
わたしの中によみがえる

でも
もうカメラに納めることが出来ない